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頭に「絵」を描く《執筆A.Y.》

英語にたくさん触れていると、英語は、頭の中に「絵」を作ってみないとわからないことが多いことに気づきます。

そういう意味で、英語はビジュアルな言語であるといえるかもしれません。

英語に訳語を当てはめてとりあえず読めたことにするというやり方から抜け出すための、それが突破口になるでしょう。

例えば、A bright idea struck him.という文があるとします。

辞書を見ると、1.「打つ、殴る」、2.「突き当たる、ぶつかる」、3.「(時計や鐘などが)(時)を打つ」、4.「(マッチ)をする、(火)をつける」、5.「(考えなどが)(人)の心に(突然)浮かぶ」、6.「(病気などが)突然襲う」などと出ていて、このうちの5.の訳を使えば「突然彼の頭にいい考えが浮かんだ」と一応訳すことができます。

しかし、どうも腑に落ちない感じが残ります。

1.〜4.と6.は2つのものが突発的・偶発的に接触する点で共通しているけれども、5.の「心に浮かぶ」だけが異質なのです。

この場合、ぶつかり合う2つのものとは何なのでしょうか。

とりあえず訳語を覚えておけばその場は何とかなりますが、とりあえず訳語を覚えたものはそれ以上のものではなく、今後自分で実感を持って使っていくことはおろか、英語が英語として読めるというレベルには決してつながりません。

いつも、ことばに実質が伴わない状態が続きます。

それではこのA bright idea struck him.という文の「絵」を作ってみるとどうなるのでしょうか。

それにはます、日本語と英語の発想の違いを知らなければなりません。

日本語では「考え」は「思いつく」ものであり「思い浮かぶ」ものです。

どちらの場合も、「考え」は自分の中から出てくるという捉え方をしています。

「ひらめく」にしても頭の中でピカッと光る感じがします。

それに対して英語では、ideaは自分の外からやってくるという捉え方もするようです。

だから、A man came to him.と同じように、An idea came to him.と言います。

「いい考えが」というのなら、A bright idea came to him.と言います。

そして、例のA bright idea struck him.という文は、このcameをstrikeという、スピードとインパクトのある語に言い換えたものなのです。

つまり、a bright ideaが、どこかから飛んできて彼(の頭)にコツンと当たったのです。

絵で見ると言いたいことがよくわかります。

英語を英語のまま読むということならば、これでいいのです。

こういう発想や表現法に慣れたらいいのです。

しかし日本語では「いい考えが飛んできて彼に当たった」という表現をする習慣がないので、同じ事実を「いい考えがひらめいた」という別の表現に移しているのです。

ただそれだけのことなのです。

しかし辞書というものは、利用者がすぐに使える訳語を提供しなければならない宿命を担っていますから、そのへんのいきさつは一切省略して訳語だけを載せます。

これが英和辞典の限界とも言えます。

英語を読んでいて、残念ながら辞書も助けてくれない、自分の頭で考えるしかない、というような表現に出会ったら、訳し方というものがないのだから、「絵」を作りながら英語で書いてあるまま読んでいくしかありません。

無理に訳そうとしないで、頭の中に「絵」を作って内容を考えるようにすると、案外すっとわかるものです。


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