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おすすめ教材・上級者編・英文法執筆A.Y.

「英文法解説(改訂三版)/¥1,785 江川泰一郎著 金子書房」

本書の初版は1953年に生まれ、その後「この種の英文法書としては他に類のまれなロングセラー」を続けています。

二度の改訂を経て内容が洗練され、up-to-dateになったとはいえ、「英文解釈・英作文・英文法を三位一体とした総合的参考書」というこの本の基本的な性格は変わっていません。

本書には「高校生や受験生には直接関係がないもので、大学程度以上の英語研究者および中学・高校で英語の教授にあたっておられる方々の参考として書かれたもの」と著者自身が説明している解説欄があります。

上級者の方にはぜひこの解説を読んでいただきたいのです。

なぜならば、本書の最大の魅力は、この解説にあるからです。

本書にはイラストや図表が1点も含まれておらず、徹底的にことばによる説明が貫かれています。

ビジュアルメディア全盛の時代に、活字だけで読者に納得してもらうためには、よほど著者の思考そのものが練られていなければなりません。

そして本書の魅力は、前述の解説欄において、著者の思索の結果が提示された後で、その先に残るもの、理屈では割り切れない何かが、ほとんど告白に近い率直な形で述べられていることなのです。

例えば、文修飾の副詞の用法について、著者はそれを4つに分類した上で、「分類はそれぞれの副詞の意味と位置を考えた上での私案だから、異論もあろう。次のような例はどれに分類してよいか、私自身も迷う」と述べています。

また、名詞の可算・不可算のような、日本語に存在しない概念も、やはり論理では割り切れないものですが、抽象名詞の普通名詞化について、次のように述べています。少し長くなりますが、引用します。

「抽象名詞の普通名詞化の要点は、抽象概念を表わす語でも具体的なものに即して考えるときは具体化されるということである。そうはいうものの、その具体化が行われる場合を全体的に把握することは必ずしも容易ではない。理屈で考えるよりも、経験的に身につけていくのがよいが、その目安として例を追加しよう。(中略)(a)と(b)はなんとなく一般的な意味での「経験」と感じられるし、(c)は個人の具体的な「経験」に感じられる。そういう感じの集積によって、本来の抽象名詞と普通名詞化した抽象名詞との微妙な相違に対する感覚を養うのである」

これは、いきなりことばは理屈ではないと突き放しているのではありません。

普段からぎりぎりのところまで論理的に英語を追いつめる努力を続けている、その果てに出てきたことばなのです。

だからこそ、かえって理屈を超えた部分を読んでも読者はすんなりと納得できるのではないでしょうか。

わかろうとする努力と、その上でわからないことはわからないと認める知的正直さ。

こうした英語に対する真摯な姿勢に本書が貫かれているからこそ、上に引用した、場合によっては、不安感を招きかねないような記述も、本書の文脈の中で読むと安心感が得られます。

また、本書で直接引用されている参考書目は、文法書・語法辞典33冊、一般辞書10冊で、著者はこれらの文献を参考に解説を書いているのですが、「各文法項目の扱い方に関しては、決して英米の学者の説を丸のみにはしなかったつもりである。

日本人の英語学習者の立場から見て、英文法の問題点がどこにあるのかを常に考慮しながら、著者自身の考え方を大胆に述べてみた箇所も少なくない」と述べています。

この日本人のための英文法という視点で書かれていることが、本書の解説のもう一つの魅力です。


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