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日本語と英語のズレ(3)《執筆A.Y.》

「頭」とhead、「首」とneck

日本語と英語の意味範囲のズレを最も具体的にとらえることができるものとして身体の部位の名称を見ていきます。

「頭」とheadを比較すると、headの方が広い範囲を指す用法が多いようです

日常的な使用では日本語の「頭」は「顔」に対するもの、「顔」を別にして頭髪(hair)のある部分をいうのが普通であって、「首から上の部分」という広い意味でいうときには「頭部」という硬い語を用います。

ところが英語ではheadは「首から上の部分(全体)」を指し、faceはheadの一部なのです。

したがって、主に髪に覆われている部分を問題にしている使い方であれば、headに「頭」という訳語を当てても差し支えありません。

He hit me on the head.は「彼は私の頭を殴った」でかまいません。

しかし、She shook her head.では「彼女は首を横に振った」とするのが自然ですし、He put his head out of the window.は「彼は窓から顔/首を出した」となるでしょう(日本語の「顔」は「顔面」のほかに「頭部」を指すこともあります)。

逆に言えば、日本語の「首」は英語のneckと完全に一致しないということです。

neckは頭部と胴体の中間の部分を指しますが、上の例の「首を横に振る」「窓から首を出す」や「首を縦に振る」「首をかしげる」のように日本語の「首」は頭部も含むことが多いのです。

この場合は英語ではneckを使わずnod (one's head)、incline one's headのようにheadを用いて表現します。

また、日本語の「頭」は英語のheadには見られない「頭髪」の意味にもなります。

「頭を洗いなさい」はWash your hair、「一ヶ月に一回頭を刈ってもらう」はI get my hair cut once a month.となります。

「背中」とback、「肩」とshoulder

日本語の「背中」は首から腰までを指しますが、英語のbackは首からおしりのあたりまでを指すので、backの方が広いようです。

また、肩甲骨の部分は日本語では「背中」に含まれるのに対して、英語ではshoulderの一部ともなります。

つまりshoulderの方が「肩」よりも広く、backの上方の部分(背中の上部)を指すことができます。

「腰」、「しり」とhip

英語には日本語の「腰」に1語で対応する語はありません。

waistは胴のくびれた部分(=肋骨とhipに挟まれた細くなった部分)を指しますが、日本語の「腰」はwaistとその下の部分をも含んでいます。

また、hipは日本語の「ヒップ」「しり」とは異なり、脚部の付け根とwaistの間の左右に張り出した部分の片方を指します。

つまり、日本語の「腰」はhips、waist、backの下部(lower back)にまたがる領域を指しているのです。

ちなみに、英語ではbuttocksが日本語の「しり」とほぼ同じ部分を指します。

したがって、英訳するときには文の意味をよく考える必要があります。

例えば「腰が痛い」というのはbackを使ってI have a backache./My back hurts.となりますし、「彼女は腰が細い」であればwaistを使ってShe has a slender waist.と言えばいいし、「父は両手を腰に当てて戸口に立っていた」ならhipを使ってMy father was standing at the door with his hands on his hips.となるでしょう。


「日本語と英語のズレ(4)」へ続く


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