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日本語と英語のズレ(6)《執筆A.Y.》

「相談する」とconsult

英和辞典では他動詞consultについて目的語が表わす対象が人であるか物であるかによって「相談する」と「調べる」のように訳語を分けて記述するのが普通です。

さらに例文の中では細かく分けられていて、consultには「(人)に相談する」「(医者)に診察してもらう」「(辞書)を引く」「(地図)を調べる」などの日本語が対応しています。

一見するとこれはconsultに意味が複数あって、その各々の意味に異なった訳語が当てられているように見えますが、実はそうではありません。

少なくとも上に示した訳語に関する範囲内ではconsultの意味は一つであって、それが文脈に応じて日本語では異なった語が当てられるのだと考えるべきです。

用例を観察するとconsultの対象は広い範囲に及んでいます。

consult a lawyer/a doctor/an accountant/a dictionary/a map/a manual/a directory/a watchなど。

実際ある英英辞典では次のように定義されていて、意味区分されていません。

to get information or advice from a person, book, etc. with special knowledge on a particular subject

「人や本などに情報や助言を求める」というのがconsultの意味なのです。

このように理解すると、今度は前述の訳語とのズレが問題になってきます。

日本語の「相談する」は話し合ったり、他人の意見を聞いたりすることを表わすので、微妙にずれています(日常的な意味での「相談する」にはtalk with/toを用いるのが普通です)。

特に「医者に診察してもらう」はズレが大きいといえます。

この訳語は医者の一方的な行動を意味し、「もらう」が明瞭に示しているように患者は完全に受身です。

ところが英語の方は患者の積極的な行動を指しているのであり、これは「医者に病状についての意見を求める」と解釈すべきものです。

そういうわけで、最近の英和辞典では「相談する」のほかに「意見を求める」「助言を仰ぐ」といった訳語を当てているようです。

「登る」とclimb

climb (up) a ladder/tree/mountain/stairsなどではclimbに対して「登る」が相当するといえますが、climb over a wall(壁を乗り越える)、climb into/out of bed(ベッドにもぐり込む/からはい出る)、climb through a hole/window(穴をもぐってぬける/窓を通り抜ける)、climb into/out of a car(車に乗り込む/から降りる)、climb down a mountain/tree(山を下りる)などの例に見るようにclimbは方向が上方に限定されていません。


「日本語と英語のズレ(7)」へ続く


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