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訳と意味の理解(4)執筆A.Y.

訳とは何か(1)

英語から日本語に、または日本語から英語に訳すときに、正しい訳はたった1つしかないような錯覚に陥りがちな人が多いのではないでしょうか。

しかし多くの場合、1つの原文に対して3つや4つの異なった訳し方があり、しかもそのいずれもが正しいと言えば正しいし、間違っていると言えば間違っているものなのです。

例えば、Have you met William?という文は、次のように訳すことができます。

(1)ウィリアムに会ったことがありますか。

(2)ウィリアムを知っていますか。

(3)ウィリアムとは知り合いですか。

(4)ウィリアムに紹介されましたか。

訳を検討する前に、注意すべきことを1つ述べておきますと、meetはふつう「会う」と訳されますが、この文のようにhave metという現在完了形で使われると、「紹介されて知り合いになる」という意味になります。

つまり自己紹介なり、あるいは誰かの紹介でお互いに初対面のあいさつをし、知人の関係を結ぶことを表わすのです。

したがって、原文の英語はウィリアムと単にどこかで行きあったとか見かけたとかいうのではなく、お互いにHow do you do? Glad to meet you.と言い合う紹介の儀式が済んでいるかどうかをたずねているのです。

そういう内容がわかった上で(1)〜(4)の日本語訳を見てみると、いずれも正しい訳と言えそうですが、また同時に、どれもぴったりの訳というわけにはいきません。

ふつうは(1)のように訳す人が多いのですが、必ずしも紹介という意味を含まないという点で不正確さがあります。

(2)(3)も原文とは少しニュアンスが異なるように思います。

(4)は場合によってはかなり近い訳となるでしょうが、「紹介」ということがあまりにも前面に出すぎているという点で、やはり原文のニュアンスと違うものが感じられます。

別なところでも述べたように、意味は文脈によってきまりますから、このことばが発せられた状況によって、どれが一番近い訳かという選択をしなければなりません。

また、もちろんこの他にもいろいろな訳し方が可能です。

別の例として、I'm afraid it will rain tomorrow.という文はどういう訳になるでしょうか。

I'm afraidという表現は、「(心配して)思う」という意味で、あとには話し手が起こらなければよいと思っていることが続きます。

次のような訳が考えられます。

(1)あしたは雨が降ると思います。

(2)明日は雨になるだろうと心配しています。

(3)あした、雨が降らなければよいのだが。

(4)あしたは雨になるでしょう。


「訳と意味の理解(5)」へ続く


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