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コミュニケーションの上手なとり方(15)執筆A.Y.》

依頼の仕方(3)

人から何かを貸してもらいたいとき、Could you lend me 〜 ?という「あなた」を主体とした言い方とCould I borrow 〜 ?という「私」を主体とした言い方のどちらを使うかについて、興味深い研究調査が行われています。

その調査では、日本人はどちらかといえば前者を使う傾向があるのに対して、ネイティブスピーカーは後者を使う傾向が非常に強いことが実証されています。

このような傾向は、他者への依存をよしとし、相手に頼ることが相手を尊敬していることになる日本文化と、個人主義や自立を価値とする英語圏の文化の違いが関係しているといわれています。

日本語では「借りていいですか」よりも「貸していただけますか」をよく使います。

日本語で聞くと「借りていいですか」には話し手の自分勝手さが感じられるのに対して、「貸していただけますか」は全面的に相手に任せた表現になっています。

そしてこの方が、日本人の感覚ではていねいな言い方に聞こえるのです。

日本人がCould you lend me 〜 ?の方をよく使うのは、日本語の習慣をそのまま英語にも持ち込んでいるからでしょう。

一方、ネイティブスピーカーがCould I borrow 〜 ?を好むのは、それが相手に全面的に依存した言い方ではないからです。

この言い方においては、許可するかどうかを決めるのは「あなた」ですが、借りるという行動をとるのは「わたし」なのです。

英語圏の文化が自立に価値を置いていることの反映でしょう。

もう一つ興味深い分析を紹介します。

飲み物などを所望するとき、Could you bring me 〜 ?とCould I have 〜 ?のどちらを使うかです。

ネイティブスピーカーの話では、前者の「持ってきてくれませんか」という依頼表現は、自分だったら友人・知人に対しては使わないだろう、特に目上の知人やあまり親しくない知人に対してbringというのは失礼であるということです。

それに対して、後者の「いただいてもよろしいでしょうか」という許可を求める表現は、自分を下に置き、相手の意向を仰ぐニュアンスになるので、ていねいであるというのです。

どちらの言い方をしても結果は変わりませんが、前者は相手にbringという動作をさせることになります。

相手がいるところから、わざわざ例えばコーヒーを持ってこさせる、つまり仕えさせることになるのです。

おそらく、レストランなどでウェーターによい印象を与えるのは後者のほうでしょう。

このように、いくらていねいな依頼表現を使っても、ていねいな言い方にならないこともあるのです。

依頼表現と許可を求める表現は、相手への働きかけにおいて微妙に違うといえます。


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