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中級者編・耳よりな発音の話(1)執筆A.Y.》

弱形のhave(1)

たとえば「昨日映画を見に行くことができた」というつもりで、それをそのまま英訳して

I could go to the cinema yesterday.

のように言ってしまうことが多いのですが(過去時の能力のcouldは、1回限りの達成は表わさないので、上の例ではcouldを避け、was able to doやmanaged to doあるいは単に動詞の過去形を用いて済ませるのがいいのです)、その私たちの言い間違いをネイティブは

I could have gone to the cinema yesterday.

と聞き間違えるといいます。

どうして彼らはcould goをcould have goneと聞き取るのでしょうか。

それは、could have goneのhaveが、-veあるいはただの-aに弱化してほとんど聞こえず、彼ら自身がかなりcould goに近い発音をしているからなのです。

だからこそ文尾のyesterdayにつられて「〜できたのに(できなくて)残念!」という意味に自然に解釈してしまうのです。

英語は「行った」「行かなかった」という「肯定と否定」「事実と非事実」の区別にとりわけ厳密な言語ですが、その大事な区別において自分が言いたいこととは反対の意味に相手にとられてしまう、あるいは相手が言っているのとは反対の意味に受け取ってしまうとなると、これは重大な事態に発展しかねません。

わたしたちは「could + have + p.p.で一種の仮定法過去完了」というようになかば公式化し、haveをその一部として強調しますが、重要だからといって、発音のほうもそれに応じて強く力を入れて発音されるとは限りません。

大切な語だから発音も強くというのは錯覚です。

例えばso 〜 thatやit is 〜 thatなどの接続詞のthatもそうです。

自分たちが「ザット」と大きな声を出して発音しているから、相手も「ザット」と強く発音してくれるものと思っていると、そのあまりの弱さに聞き逃してしまうのです。

英語の機能語というものは単語ではなく信号なのです。

元来、信号とはそういうものであり、一瞬のものなのです。

could have goneのhaveも同じです。

ということは、これを早口で発音するとcould-a gone(クッダ ゴーン)のようになるということです。

だから、could goを日本語流に(クッド ゴー)と発音すれば、ほとんど(クッダ ゴー)と変わらなくなり、could a goneと言ったものと解釈されるのも自然の成り行きです。

could goは(クッ ゴー)と発音されてこそcould goです。

そもそもcouldを使う必要のないところにcouldを使ったのが誤りの始まりなのですが、その言い間違いが相手の聞き間違いにつながるところが興味深いといえます。


耳よりな発音の話(2)」へ続く


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