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中級者編・耳よりな構文の話(1)執筆A.Y.》

抽象名詞構文(1)

高校卒業レベルではふつうの英語力をそなえている日本人学習者が、英文読解においてつまずくものの一つが「抽象名詞構文」と呼ばれるものです。

抽象名詞構文とは、節が表わす命題(〜は…である/する)を、その述語動詞(be動詞の場合はその補語である形容詞)を派生名詞にして、名詞句として表わす構文のことです。

We failed to persuade him./文
→our failure to persuade him/名詞句(動詞派生)

He was ignorant of the fact./文
→his ignorance of the fact/名詞句(形容詞派生)

この構文をネイティブスピーカーが理解する手順を探ってみれば、日本人学習者がこの構文を習得するヒントが得られるかもしれません。

ネイティブスピーカーは抽象名詞構文をどう読むのかというと、おそらく、彼らは派生名詞を独立した名詞としてではなく、動詞派生の抽象名詞であれば動詞の変化形の1つとして読むのではないでしょうか。

例えば、completeにはto completeやcompletingという形があり、そういう変化形の一つとしてcompletionをとらえているのです。

この推測にはそれなりの根拠があります。

それは、学習英英辞典が動詞派生名詞を定義するときに、例えば、completionにはthe act of completingのような手法を用いることです。

これは、動詞派生の抽象名詞構文は[〜は(を)…する]という命題の形で理解すればいいということを示唆しています。

そして、命題の形のほうが理解しやすいのは、ネイティブの幼児が誤ってwant that節を使うことでも証明されます。

このように考えてくると、抽象名詞の意味を正確に理解するためには派生元の動詞(または形容詞)の意味を出発点にすべきです。

our failure to persuade himのfailureという名詞の意味を学習英和辞典に求めても「失敗」という訳語が載っているだけです。

そこで動詞のほうに目を転じると、「失敗する」のほかにfail to doという動詞型の表示とともに「…しない、できない」という訳語があり、これで「彼を説得するためのわれわれの失敗」という奇妙な日本語を作る代わりに、「私たちが彼を説得できない(できなかった)こと」というまともな日本語で意味を説明できるようになります。

his ignorance of the factにおけるignoranceという名詞にしても、苦労して覚えた「無知」という訳語を当てはめれば「彼のその事実の無知」というあいまいな日本語になってしまいます。

ここはignorantという形容詞で考えたほうが、あいまいさのない意味を得やすいのです。

英和辞書でignorantをみてみると、be ignorant ofという形容詞型という表示とともに「…を知らない」という訳語があるので、「彼がその事実を知らない(知らなかった)こと」という明快な日本語で意味を得ることができます。


耳よりな構文の話(2)」へ続く


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